Sunday, March 08, 2009

ポトスライムの舟

以下の本を読んだ.

ポトスライムの舟[単行本]
津村 記久子
  • 単行本: 186ページ
  • 出版社: 講談社 (2009/2/5)
  • ISBN-10: 4062152878
  • ISBN-13: 978-4062152877
  • 発売日: 2009/2/5
  • 商品の寸法: 19.2 x 13 x 2.2 cm
お金がなくても、思いっきり無理をしなくても、夢は毎日育ててゆける。
契約社員ナガセ29歳、彼女の目標は、自分の年収と同じ世界一周旅行の
費用を貯めること、総額163万円。第140回芥川賞受賞作。
...とのこと.

芥川賞受賞作につき,読んでみた.
現代の蟹工船と呼ばれていることもあり,夢をなくしたニートのような
人物の物語かと思った.
しかしながら,実際には,契約社員ながらきちんと仕事があり,
さらに,友人の喫茶店,パソコン教室でも仕事を持っている.
また,友人,家族とも,それなりに良好な関係を保っており,
なんら問題がない.
# 主人公が,前の会社を辞めたりしている経緯から,
# 若干,母親とは確執があるか.
そもそも,母と実家に暮らしており,現在の1人暮らしの非正規雇用者とは
比べ物にならない.
その環境において,世界一周旅行の代金を貯める,というのは,
そんなに難しくないような気がする.

刺青や自転車のブレーキパッド,ポトスライム,雨水タンク,などの
くだりには,芥川賞の片鱗を感じさせた(かな).
しかしながら,全体としての完成度は低く,次回作への期待も薄い.

また,もう一本「十二月の窓辺」という作品も一緒に収録されている.
本当に出来が悪いのか,ただ単にいびられているだけなのか
分からないが,印刷会社の新人である主人公が,さまざまな
トラブルに巻き込まれ,最終的に無事(?)会社を辞める話.
途中,窓から見えるタワーの話が伏線(?)になっている.
この作品も,1人会社になじめない主人公の話かと思いきや
別会社ではあるが,近くに仲の良い先輩もいるし,会社内でも
先輩たちとそんなに険悪ではないように見える.
よって,これもまた,そんなに悲惨な環境ではないように
思われ,感情移入しにくい.

次回の芥川賞に期待しよう.